研究概要 |
本研究では,発育や運動時の筋肥大に対するmyostatinの役割を明らかにするために、実験1において,育期のラットに対し食事制限や下垂体摘出を行い、その時のmyostatin mRNAの発現量を調べた。5週齢のWistar雄性ラットに対し,正常発育グループ(NC),中程度食餌制限グループ(MU),体重の増加をほぼ完全に抑制した食餌制限グループ(SU),下垂体摘出グループ(HX)の4つのグループを作成した。4週間の経過観察の後、筋重量およびmyostatin mRNAの分析を行った。ヒラメ筋および咬筋の筋重量は、NC群が最も高い値を示し、次にMU群、最も低かったのがSU群とHX群であった。足底筋の筋重量はNC群が最も高く、MU群、SU群、HX群の順に筋重量は低い値を示した。ヒラメ筋と咬筋のmyostatin mRNAは、食餌制限の影響が認められなかったのに対し、足底筋のmyostatin mRNAは、NC群と比較してMU群およびSU群において有意に高い値を示した。下垂体摘出によって、ヒラメ筋では、HX群のmyostatin mRNAがNC群、MU群、およびSU群と比較して有意に高い値を示した。しかしながら、足底筋ではHX群のmyostatin mRNAはMU群およびSU群と比較して、咬筋ではHX群はNC群、MU群およびSU群と比較して有意に低い値を示した。実験2では,足底筋の協働筋である腓腹筋とヒラメ筋を摘出するという外科的運動モデルを用いて,その時のmyostatin mRNAの発現量を調べた。9週齢のWistar雄性ラットに対し,正常な下垂体を持つグループ(NC),正常な下垂体を持ち,機能的過負荷を施されたグループ(NOL),下垂体を摘出したコントロールグループ(HxC),下垂体を摘出し,機能的過負荷を施されたグループ(HxOL)の4つのグループを作成した。機能的過負荷21日後において,NOL群の足底筋の筋重量はNC群に対し有意に高い値を示し,またHxOL群の筋重量はHxC群に対し有意に高い値を示した。下垂体摘出によって,HxC群およびHxOL群の筋重量は,NC群に対し有意に低い値を示した。正常な下垂体を持つラットに対してはみられなかったものの,myostatin mRNAは,機能的過負荷3日,21日後ともHxOL群がHxC群より有意に低い値を示した。これらの結果から,myostatinが部分的ではあるが,発育や運動時にみられる筋肥大に対し何らかの役割を果たしている可能が示唆された。
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