研究概要 |
運動もしくは身体活動の影響を,糖尿病と高血圧についてはランダム化比較試験で検討した論文を,悪性新生物についてはコホート研究で検討した論文を,MEDLINEを用いて検索収集を行い評価した. 1.糖尿病の発症予防と治療に対する運動の介入効果(1985〜2003年に登録) (1)身体活動と糖尿病発症予防:3件の大規模な介入研究のいずれもが,身体活動度を高めると糖尿病の発症が抑制されることを示していた. (2)2型糖尿病治療における運動の効果:収集した23編の論文では,対照群と比較してHbA1cを有意に低下させたのが14編,運動の有効性を示唆するが断定できないレベルにあったのが4編,HbA1cが低下しない,もしくは低下はしたものの両群に有意な差が認められない論文が5編であった. 2.高血圧症に対する運動の効果(2000〜2004年に登録) 21編の論文の中で対照群と比較して有意に血圧を低下させたのは12編,運動の効果が示されなかったのが5編,記載が不十分等で断定できなかった論文が4編であった.論文の中には他の治療法と比較した研究があったが,運動は利尿薬や減塩食に比較して降圧効果が弱く,運動療法の限界が示された. 3.身体活動度と悪性新生物(2000〜2004年に登録) (1)身体活動度と悪性新生物による死亡:7編の論文中4編が,身体活動度が高い集団は悪性新生物による死亡が少ないことを示していた.また,非活動的な生活をしていても,身体活動度を高めると悪性新生物による死亡率が低下する報告もあった. (2)身体活動度と悪性新生物罹患のリスク:身体活動度と関連が強い悪性腫瘍は,乳癌,大腸癌,子宮内膜癌,膵臓癌であり,研究によって意見が分かれていたのが,前立腺癌,卵巣癌,腎細胞癌,膀胱癌である.膀胱癌では逆に身体活動度が高い人はリスクが高くなるとの報告もあった.
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