研究概要 |
水中運動に関する先行研究は,運動肢が水中であることがほとんどであった.今回,運動肢を水の外に設定することにより,水中にある身体に及ぼす影響を選択的に明らかにする環境設定を考案した.このことによりハンドエルゴメーターを用いた運動処方と評価方法に関する新しい知見を提供できるものと考えた.各被験者に対して,ヘルシンキ宣言の趣旨に沿って研究の目的,方法,期待される成果,不利益がないこと,危険性を十分排除した環境とすることについて十分な説明を行い,研究参加の同意を得た.目的を遂行するために以下の実験を設定した.『・水中と陸上におけるハンドエルゴメーター運動時の腹部大静脈横断面積の比較・水中ハンドエルゴメーター運動における運動強度の違いが腹部大静脈横断面積に及ぼす影響・水中ハンドエルゴメーター運動における水位の違いが腹部大静脈横断面積に及ぼす影響・水中立位時の腹部大静脈横断面積の変化・水中立位における下腿部阻血が腹部大静脈横断面積に及ぼす影響』.本研究は,次の知見を新しい知見として提供する.1.運動時の腹部大静脈横断面積は,陸上条件より水中条件において有意に大きいこと.2.腹部大静脈の形態変化は,水中運動時の運動処方の指標として妥当な評価方法であること.3.水中運動時の静脈還流量の変化は,水位に依存して変化すること.4.同一被験者の静脈還流量は,年間を通してほぼ一定であること.5.水圧下の静脈還流は,秒単位で適応すること.6.足浴は,運動中の血圧変動には大きく関与することはないこと.7.水温40℃の足浴は,リラクゼーション効果を促進させること.これらの新しい知見を運動処方へ適応すれば,水中運動は,予備の範疇で血液循環に対応できることを示し,負荷強度設定範囲に高い自由度を与えることができることを示唆する.
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