研究概要 |
最終年度はこれまでに開発した教材を用いて,1ヶ月の無作為割付介入試験を実施した(プロジェクト名称:わんぱくキッズ宅配便).具体的には地方中都市(人口約30万)の保健所と連携して,市内の公立保育園(27園)・幼稚園(26園)・小学校(54校,1年生のみ)に参加募集冊子(約4500部)の配布を依頼した.その後,申込みのあった家庭に対して,歩数計,親子関係検査,各種調査票を郵送した.初回の調査票等が返送後,クロスオーバーデザインにより,参加家庭単位で介入群と比較群に無作為に割り付けた.プログラムで用いる行動変容技法は,目標設定,達成度評価,オペラント強化法(外的報酬),運動実施の阻害要因と効果的対処,行動観察,ソーシャルサポートである.実施期間はおよそ6週間で,教材配布を3回,行動変容のスキルアップ課題を3回,アドバイスのフィードバックを2回行う.また,歩数計を配布し,1日の歩数を記録し返送するよう求めた.教材の配布は,およそ2週間に1回のペースである.教材は親子で楽しく運動遊びができるよう工夫されているが,参加者は指導者と一度も顔を合わせることなく,全てのコミュニケーションは紙を媒体としている.またいつ・どのよう・どんな運動遊びをするか,などといった実施の内容はすべて参加者による自己決定に任された.主な評価項目は,歩数,運動遊び時間,親子での運動遊びに関する準備性である. 申込み家庭数は58家庭(親子合計対象人数:191名)で,父親47名(平均年齢:38.1才),母親56名(36.4才),男児48名(5.8才),女児40名(6.0才)であった.結果、46家庭がプログラムを開始し、プログラム終了時(開始より5週間後)まで継続した家庭は34家庭(73.9%)であった。 結果として子供の歩数に変化はみられなかったが、運動習慣のない大人の歩数は増加し、本研究の簡易な介入が30代後半の比較的若い年齢層に有効であることが明らかになった。またプログラムへの総合評価は7.9点と高かった。今後、親訓練の要素を十分に取り入れ、子供の「外遊び」につながる行動を変容させるためのスキルを、親自身が高めてくプログラムに改良する必要があることが示唆された。
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