研究概要 |
本研究の結果を以下に要約する. (1)沖縄クレジット・サラ金被害をなくす会のデータ分析:平成15年(n=1000),平成16年度(n=762),平成17年度(n=900),平成18年度(n=956)の現状を分析した.その結果,多重債務に陥った最初の借金理由はこの4年間変わらず,生活費,保証人名義貸し,事業賢金の順となっている. (2)多重債務問題を解決する自己破産や特定調停等の法的救済は,もう生きられないというぎりぎりの状態から抜け出すには有効である.法的救済でこれまでの借金は軽減されるが,その一方で借金の原因となった不安定雇用,低収入は変わらない. (3)多重債務者の生活困難では,金銭問題以上に,借金で精神的に安定した生活ができない,借金で家族関係が悪くなっている等,精神的な苦痛が上位となっている. (4)法的救済は,あくまでも事後処理である.その前に問題発生の抑制が重要であるが,その根元的な解決には,国民の生存権としてのナショナルミニマムの確保,換言すれば,普通の人の普通の暮らし(希望の教育を受けられる,職がある,屋根のある場所で寝起きできる,病気になったら病院に行ける,高齢になったら年金がある)がすべての国民に保障されなければならない. (5)多重債務者支援団体の中には,家計簿の記帳により,家計の収支が把捉できるとの報告もある.しかし.本研究における調査では,多重債務者の生活は,生活保護の5割以下の生活であり,収入をやりくりできるだけの金銭的な余裕はみられなかった. (6)多重債務教材を用いた授業実践で,多重債務のない社会にするために高校生が考えた大項目には,I借金をせずにできることには,a.収入の範囲で生活すること,b.不意の出費に対応すること,c.社会を変えること,II借金しながらできることには,d.借金について学び行動すること,e.相談すること,が挙げられた. (7)多重債務教材に関する家庭科教員の知識と授業実施には関連性がみられ,知織に不安のある内容は数えられない傾向にあることがわかった.
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