研究概要 |
各種水系処理への泡沫の応用は,節水・省エネルギーに直接的な効果があるとして注目されている.すなわち比熱の大きな水の大部分を空気など比熱の小さな気体に置き換えてかさ高にすることで,節水が可能となり,また高温処理では昇温,保温に必要なエネルギーの大幅な節減が期待できる. 本研究では,泡沫を積極的に移動させることにより,泡膜内部や泡膜と基質の接触部分に構成されるPlateau境界の内部に,洗浄作用や染色にきわめて有効な液流が発生する点に着目し,この液流の流速測定システムを構築した.ここでは,従来の研究にしたがい,主として界面活性剤溶液に気体(空気)を送り込む送気法で起泡を行い,ここで発生した泡沫あるいは泡膜を,ガラス管等を介して観察用のセルに導く.観察用のセルとしては光学セルを改造しパイプ状にしたものを用い,これを顕微鏡のステージ上にセットする.この顕微鏡装置には高速度ビデオカメラを設置し,通常の条件下ではきわめて観察困難な高速の液流の観察を可能とする.なお,観察後の泡沫は,やはりガラス管等でトラップへ誘導し,ここで消泡する. また,液流観察および流速測定のための条件設定を行った.基本的には界面活性剤溶液で泡膜を形成するため,無色透明の泡膜が観察対象となるが,ここでは,微小な固体粒子polystyreneなどをdetectorとして使用し,その動きを液流とみなして液流の解析を行うこととした. 観察の結果,Plateau境界の内部には,泡膜そのものの移動速度よりも大きな速度を有する液流が認められ,またその方向は必ずしも一定ではなく,いわゆる乱流が発生していることが確認された.さらに泡膜と垂直,平行の2方向に速度成分を分割した場合,平行方向の成分が大きくPlateau境界の長さ方向に沿った液流が活発であることが明らかとなった.
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