研究概要 |
納豆菌体中のdipicohnic acid(DPA;2,6-pyridinedicarboxylic acid)はJanssenらの比色法で分析した結果,最も多いものは乾燥重量にすると約2.4〜3.6%をも占めることが分かった。 DPAとその誘導体であるquinolic acid(2,3-pyridine dicarboxylic acid),2,4-pyridine dicarboxylic acid,isoinchlorendic acid(2,5-pyridine dicarboxylic acid),3,5-pyridine dicarboxylic acidの抗菌活性を比較した結果,抗菌活性はDPA独特のものであることが分かった。また,この抗菌活性に対する各種金属イオンの影響を調べた結果,その活性は2価イオンであるCa^<++>,Fe^<++>,Co^<++>,Zn^<++>の添加によって強く阻害されることが分かった。 また、DPA添加は納豆菌のナットウキナーゼ生産量を高めることを明らかにした。即ち、納豆菌として宮城野、目黒、高橋、成瀬の4株を用いた場合,2mMのDPA濃度でナットウキナーゼ生産量を高め、例えば宮城野の場合のフィブリン平板溶解活性は非添加の2倍の256.1mm^2/30μl/37℃、4hr(ナットウキナーゼ活性として1,500FU/ml)であった。これは10種類のニコチン酸関連物質の添加比較でもジピコリン酸が最も強力な効果を示すことが確認された。 DPAは最終濃度5×10^<-3>mol/lでヒトのATPによる血小板凝集の反応を強く抑制すること,またトロンビンのフィブリノーゲンからフィブリンへの反応を強く抑制することが分かった。また,5×10^<-3>mol/lでトロンボエラストグラフィーで見られる血液凝固反応を完全に阻止することも分かった。一方,DPAの誘導体は10mMでもこのような強い効果は見られなかった。ヒトでのプロトロンビン時間,活性部分トロンボプラスチン時間,およびユーグロブリン溶解時間に変化はなかった。 ヒト血液血小板は30μM ADPで凝集するが,5×10^<-3>M DPA存在下でdose dependentに凝集阻害されることが分かった。計算されたCI_<50>はかなり低濃度の1.8×10^<-3>Mで,これは臨床で使うアスピリンを添加した場合よりもはるかに強いもの(4×10^<-2>M)であった。
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