研究概要 |
数学的モデリングを促進する考え方の指導法の一つとして,「対立-止揚」過程に焦点を当てた指導法が有効である。この指導法は,下記の2点を特徴とする。 (1)数学的モデリングの全過程を意識しながら,生徒が部分を考えながら全体を見渡し,全体を考えながら部分を振り返れるように配慮すること。 (2)全ての過程を同程度に強調するのではなく,授業のねらいとして設定した鍵となる考えを生徒の討論すべき論点として設定し,教師と生徒,生徒同士のやりとりから,「対立-止揚」過程を通してそれが導かれるような場面設定,発問を考える。そして,意図した「対立」へと生徒を追い込むために,教師は,生徒から出された考えに寄り添いながら,その考えを否定する考えを生徒のつぶやきからひろったり,あるいは,教師自身が生徒から出された考えの否定的な側面を問いかけていくこと。 (1)(2)に留意することにより,「対立」が集団の中で共通理解できれば,鍵となる考えが,どのような背景からどのように引き出されるのかを理解することが可能になる。ここに,「対立-止揚」過程を集団の中で共有しながら進めていくよさがある。ただし,「対立」を止揚した鍵となる考えについては,期待通りに引き出されるとは限らない。教師と生徒では,現象を見る視点が異なることを受け止め,意図した考えとは異なっても,一つ一つ検討しながら,鍵となる考えへとつながる発問をしていくことが重要である。
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