研究概要 |
本研究は,算数・数学科の授業改善システムの開発と評価に,「質的研究法」という新しい視点を組み入れるため,(ア)小学校算数科と中学校数学科の研究授業を計画し,(イ)質的研究法を取り入れた研究授業を実施した. (ア)に関しては,国内外の研究授業に関する理論及び実地・調査研究ならびに,現場教師との共同による質的方法に基づく研究授業の計画した.理論研究としては,米国ミシガン大学マクダリン・ランパート教授の研究を考察し,授業改善の視点を得た.それらは,「教室文化を形成すること」,「授業を再構成すること」,「個人の学習を指導すること」,「教室全体の議論を組み立てること」,そして「単元にわたって内容のつながりをつけること」である. (イ)の課題に関して,質的研究法を取り入れた算数科と数学科の研究授業を試行した。実際には,2カ月に一度の割合(5月,7月,9月,11月)で,小学校6年の比例の授業と,中学校1年の一次方程式の授業の質的データ(文字化された発話記録や児童の作業記録等)について,「教室文化を形成すること」,「授業を再構成すること」,そして「単元にわたって内容のつながりをつけること」の3点に関して,授業担当教師,参観教師,研究者が共同で分析を行った。これらの分析を通して,個々の分析視点ではなく,複数の視点が相互作用する「創発」的アプローチに基づく授業改善が,授業改善にとって有望であることが示唆された. 研究成果は,日本数学教育学会第36回数学教育論文発表会(課題別分科会),日本数学教育学会第37回数学教育論文発表会(口頭発表の部)並びに数学教育世界会議ICME10(トピック・スタディ・グループ25:数学教育における言語とコミュニケーション)で発表した.
|