研究概要 |
密度測定による金属同定は,密度の測定値と文献値との比較によりなされる.測定値には測定誤差が含まれるため,測定値と文献値が一致するとは限らない.同定するには,同定可能な測定値の範囲(同定可能範囲)を設定する必要がある.同定可能範囲の設定のしかたは,同定のために参照する特定金属の密度(特定値)に依存するタイプ(特定値依存型)と,特定値と数値が隣接する密度(隣接値)に依存するタイプ(隣接値依存型)に区別できることが見出されている. 本研究の目的は,授業方法の違いが同定可能範囲の設定のしかたに及ぼす影響を明らかにすることにある.以下の知見を得た. 1.教材(学習資料)として密度表に注目し,密度表の密度の並び順の違いが同定可能範囲に及ぼす影響を分析した.数値順の並び(特定値の両隣に隣接値が表示される)を物質名順の並び(特定値の両隣に隣接値が表示されるとは限らない)にすることで,隣接値依存型の隣接値方向への広がりがおさえられることを見出した. 2.授業展開として実験に注目し,実験で得た測定値と文献値との不一致の大小の違いが同定可能範囲に及ぼす影響を分析した.文献値との不一致が小さい測定値を得た実験体験により,隣接値依存型の隣接値方向への広がりはおさえられること,文献値との不一致が大きい測定値を得た実験体験により,隣接値依存型の隣接値方向への広がりは実験前よりも大きくなることを見出した.
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