研究概要 |
本研究は,現職教師及び教員養成系学部に在学中の教師志望学生が保持する,理科授業に関する知識・思考・信念の実態を明らかにするとともに,教員養成カリキュラムや現職教師を対象とした研修が,理科授業に関する彼らの知識・.思考・信念の形成・変容に与える影響について考察し,理科教師の専門的力量の向上を目指した教師教育の改善のための示唆を得ることを目的とした。 上記の目的の達成を目指し、本研究では、教師志望学生の理科授業の構想と実践にかかわる知識・思考・信念等に関する質問紙調査を追跡的に実施してその結果を分析し,彼らの理科授業観や理科教師観等の実態と変容について考察した。また,現職教師を対象とした,理科教育に関する初任者研修の内容や方法,理科授業の構想や実践にかかわる知識・思考・信念等に関するインタビュー調査,及び理科授業実践の観察を実施してその結果を分析し,理科教師の力量形成に関する初任期の実態と課題について考察した。 その結果,教師志望学生については,理科の指導法に関する授業を受講する以前から彼らなりの理科授業観や理科教師観を保持している者がいる一方で,受講した授業を通して新たな視点や考えを獲得し,理科授業観や理科教師観を変容させていく学生も認められた。ただし,同じ授業を受講した場合でも,その変容には学生による多様性が認められた。また,初心期の教師の理科授業に関する力量形成については,小学校教師と中学校教師の両者に共通する実態や課題とともに,学校種による特徴や,個々の教師固有の理科授業観等に関連した課題も見出された。しかし,これらの課題の解決に対して,教員養成カリキュラムやフォーマルな初任者研修が十分に貢献しているとは言えなかった。 今後は,教師のライフステージ全体を見通した力量形成の実態と課題を解明し,教員養成カリキュラムと現職研修の内容・方法の改善策について検討を進める予定である。
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