研究概要 |
本研究の目的は,高等教育における情報通信技術(ICT)を使った学習環境の改善にある。こんにちでは,講義において,WebページやPowerpointの資料等,様々なデジタルコンテンツが,よく使われている。デジタルコンテンツの利用は,確かに,学生に説得力があり,関心をもたせることができるが,その一方で,次々に切り替わるスライドショーは,ノートをとることが困難で,学生を観客にしてしまう。さらに,完成度の高いものは,その説得力により,かえって,深い思考や批判的思考を妨げることにもなりうる。教育の情報化が,真に,教育・学習の発展につながるためには,このような問題を克服しなければならない。そのためには,少なくとも,講義を,学習者のペースで復習できる環境がなくてはならない。そこでは,講師の映像・音声と使用されたコンテンツが,授業におけるように,同期をとって再現されなければならない。このような目的のために,すでに,商用あるいは非商用で,いくつかのシステムが提供されているが,そのほとんどは,特別なハードウェアかソフトウェアの利用を前提としている。それは,講師にも,大学にも負担を強いることになる。そこで,私たちは,もっと簡単に,そして安価に,講義を再生するシステムの開発を行った。そこでは,Windowsパソコンの利用を前提に,講師のパソコンの操作に合わせて,画面をキャプチャし,それと,講師の映像・音声とを同期をとって再生するものである。キャプチャシステムは,独自に開発し,オープンソースとして提供する。同期再生には,オープンな記述言語SMILを採用している。開発したシステムは,すでに,北海道大学の教育情報システムに組み込み,利用に供している。
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