研究概要 |
我々は大学学級環境インベントリ(CUCEI : the College and University Classroom Environment Inventory)の日本語版を作成して、大学の講義型学級に適用してきた。採用した尺度は、関係性次元の「関与」(学生が授業に参加する程度)と「満足」(授業を楽しむ程度)、個人発達次元の「課題志向」(授業の活動が明瞭で組織的である程度)、システム維持・変化次元の「改革」(教師が新しい授業活動や教授法や課題を計画する程度)である。 平成15年度はCUCEIの尺度を用いて,講義型科目10学級と、英語科目17学級のデータを得た。平成16年度は講義型科目13学級を調査した。この年度は,CUCEIの尺度に加えて,Roger Barkerの「生態学的心理学」にある「行動場面」の概念に基づいて,「時間的・空間的境界」「行動対象の利用」「行動プログラム」「場面からの満足」に関する20項目を加えた。 CUCEIの結果は「個人水準」と「学級水準」で分析した。学級水準の信頼性は高く,また因子的妥当性は二つの水準ともに、「満足」・「課題志向」と、「関与」・「改革」の2因子構造となった。「学級の課題の明確化」は「学生の満足」を増大させ,「教授法の工夫」は「学生の授業参加」促進させ、授業を多様化させる。このように、CUCEIは講義型学級の改善に有効であることが明確に示された。「行動場面調査法」の結果は「授業中の学生と教師の交流」と「学生の満足」が強く相関すること,また「授業の進め方」「逸脱行動への対処」という独立の因子の存在を明らかにした。
|