研究概要 |
情報科教育法は教育実習に行く前年までに開講し,授業の一環として受講生による模擬授業を行う場合が多い。2003年度の授業では,大倉が開発した遠隔評価システムを用いて模擬授業シーンを保存し,それを高等学校の情報教育のベテラン教員に評価してもらった。それをさらに進めて,キャプチャされた模擬授業の時間軸に沿って書き込まれたベテラン教師の評価コメントを動画・スライドとともに振り返り,受講生が教材を改善する授業方法を実践した。3名のベテラン教師が改善されたデジタル教材について,授業で利用しようとした場合に(5:そのまま使える,4:少し改善を要する,3:改善を要する,2:かなり改善を要する,1:使えない)5段階で評価を行った。事前に別の教師が同じ観点で評価したデータと比較したところ,4ポイント以上と評価された教材が7/11本あることがわかった。そのうち6本は改善後に4を上回った教材であった。このことにより,模擬授業で受講生が製作したディジタル教材は,実際の授業でも少し改善を加えるだけで利用することが可能であることがわかった。 一方、ビデオ教材、教科書、問題集、Web問題集などは一通り数がそろったものの、これらは完全には同期しておらず、章,項目単位で教師が適宜これらを選択して利用するのが一般的である。概念的な内容を具体的に指導する必要のある"情報倫理"において、ビデオ教材はきわめて有用で効果的である。しかし、従来型のビデオは一方向的で、部分的に扱うことが難しく、教師の指導計画に合わせにくいといった問題があった。そこで、ビデオテープで販売されていた教材をDVD化し、それぞれの場面に関する"板書例"をスライドとして同期させ、ビデオ側・スライド側双方からリンクされた場面に移動できる仕組みを開発した。さらに、その場面に同期した問題をポップアップ表示し、回答を収集する仕組みも組み込んだ。本教材により、情報科の授業においてビデオ教材を教師の指導意図の下に自在に制御できるようになった。
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