これまでの愛知県小原村での1999〜2002年度の4年間の野生クリの収穫量・収穫期間調査結果をふまえ、2003年度もこの調査を継続して行った。調査の方法としては観察対象樹24本を用いて、これらのクリの木で秋期に実が落ちはじめたら、熟して落ちたクリの実を毎日それぞれの木ごとにに採集して持ち帰った。調査期間は約2ヶ月間は毎日名古屋大学から小原村にクリ採集に通った。採集した1つ1つの実について、木ごとに通し番号をつけ、長さ・幅・厚さを計測し、さらに定温乾燥機によって80℃で48時間乾燥後に重量を計測し、記録した。この作業を全てのクリの実が落ち終わるまで続けた。この5年間の調査データから収穫量の年変動サイクル等について分析し、その結果を雑誌「考古学と自然科学」47号に「野生クリ(Castanes crenata)の収穫量の年変動について」として発表した。 さらに野生クリの特性の地域差を考えるために、2004年の秋には岐阜県恵那市・中津川市において同様の野生クリ採集調査を行った。調査の方法としては、調査地点を恵那市で3地点、中津川市で1地点の計4地点選び、野生クリと思われる調査対象木を10本選定した。これらのクリの木で秋期に実が落ちはじめたら、熟して落ちたクリの実を1日おきに採集することとした。実を毎日採集しないので、実が動物に食べられることを防ぐために、対象木の樹幹を投影した(クリの実が落ちると予想される)範囲には地上に周囲を高くしたネットを設置した。採集した1つ1つの実について、木ごとに通し番号をつけ、長さ・幅・厚さを計測し、さらに定温乾燥機によって80℃で48時間乾燥後に重量を計測し、記録した。この作業を全てのクリの実が落ち終わるまで続けた。この調査の結果から、縄文人のクリ採集のサイクルについての考察を雑誌「動物考古学」22号に「縄文人はクリを毎日採集したのか?」として発表した。
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