研究概要 |
本研究の目的は(1)日本において「地図嫌い」が発生するプロセスを明らかにすること、(2)その反対の性向である「地図好き」といわれる人々が発生するプロセスを明らかにすること、(3)地図教育によりどのようにして地図好きを創り出すことができるのかを考案すること、(4)一般の社会人に地図を活用してもらうにはどのようにすればよいのかを考案すること、以上4点である。研究1年目は主に(1)と(2)に関するアンケート調査を実施し,2年目は得られたデータの分析・考察を進めるとともに,(3)と(4)に関する調査研究を行った。 大学生を対象にした「地図嫌い」「地図好き」に関するアンケート調査の分析・検討からは,小学生から中学校に年齢があがるにつれて地図帳への愛着が薄れていくこと,地形図に関しては入手方法すら知らないなど理解が十分ではないこと等が明らかになり,イギリスで開催された国際学会でその結果を発表した。小学生を対象とした調査からは,地図の表現方法及び縮尺の違いと「地図嫌い」「地図好き」との関係が明らかにされた。 また,研究分担者2名がアメリカ合衆国で地図教育に関する授業観察・意見交換・教材収集を実施したほか,イギリスでも研究代表者と分担者の2名が学会発表をもとにした意見交換・資料収集を実施した。この結果,初等教育段階においては発達段階に応じた教材が作製され丁寧な指導が行われていること,地図の社会における有用性が学校教育の場で積極的に伝えられていることが明らかになった。 これら研究結果から,日本における地図教育の課題が明確になり,カリキュラム改善の方向が見いだされた。さらに,GISを活用した地図学習場面を設定し,その実践を分析・検討した。
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