研究概要 |
地形・地質的に均質性が高く,独立した山地としてとらえられる屋久島において,地形計測と堆積物の調査から屋久島を開析する河川の地形的特徴,屋久島の起伏構造,屋久島に特徴的な巨大な礫の生産,移動プロセスを検討した.屋久島は日本でもっとも大きな平均標高と平均起伏をもつ山地の一つである.両者の関係においては他の日本の山地と同様の特徴を持ち,その標高にみあった起伏をもっている.しかし,標高帯と起伏の関係では他の山地流域とは異なった傾向を示し,標高500mまでは起伏が急激に増大し,標高700mを超えると標高が高いところほど起伏が小さくなる.これは,屋久島の隆起開始時期が他の山地より遅いにもかかわらず,隆起速度がきわめて速く,島の周縁では河川の侵食により深い谷が形成されているのに対し,島の中心部には河川侵食の影響が及ばず,小起伏の地形が広がっていることによる.今後,周縁部での尾根高度の低下と,中心部での河川による下刻と崩壊による谷の切り合いが生じ,低標高域における起伏が減少するとともに高標高域における起伏が増大していくと推定できる.屋久島の河床には中径が1mを超える大きな礫が一般的に分布している.これらは河床勾配の緩やかな地点においても見られる.また,河床勾配が大きな地点では3mを超えるきわめて大きな礫が分布している.起伏の大きい島の外縁地域を河川が横切るところで谷壁崩壊や支流からの土砂流入によって形成された天然ダムは巨大な土石流を引き起こし,これらの大きな粒径の礫が運搬されたと考えられる.このように本研究では急激に隆起しつつある孤立した山地で,きわめて多く激しい降水があるという屋久島の自然環境の特性が,屋久島独特の起伏構造をつくり,これが地質条件とあいまって巨大な岩塊の生産と土砂移動を引き起こし,河床には巨大な礫が折り重なるという景観をつくりだしていることが明らかになった.
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