研究概要 |
本研究では,我が国の大都市近郊混住化地域における人口減少とそれに伴う地域問題を"ラーバンデクラインと呼称し, (1)首都圏を事例に,地域構造,人口動態などの指標から,人口減少が発生する混住化地域の空間的特性を把握する. (2)人口減少,住宅団地の空洞化の発生する事例地域を対象に,現地詳細調査を行い,人口減少に伴う地域問題の実態を明らかにし,地域計画上の課題の抽出とその地域計画上の対応について基礎的な知見を得ることを目的とする. 我が国では,高度経済成長以降,都市近郊村落地域において集落外から住宅を求める都市住民の急激な人口流入にその成因を持つ,都市とも農村とも特性を異とする混住地域という空間が形成されてきた.現在混住地域では,都心回帰,生活環境の未整備などのため人口が減少するというこれまでと相反する現象が起きている. 東京大都市圏における近年の人口動向をみると,混住地域,特に主たる住宅地開発がミニ開発による地域では,社会基盤や生活環境の整備,コミュニティの形成がほとんど手つかずのまま人口減少を迎えおり,人口減少が生活基盤の悪化にさらに拍車をかける可能性が高い. 混住地域の新住民住宅地では,住宅の空き家化による空洞化(可視的ラーバンデクライン)が発生しているが,住宅地の開発形態により空洞化の程度に差が生じている.この開発形態の違いで,人口減少下のコミュニティ形成・再生の地域計画的対応は異なることを明らかにした. 今後の地域像としてのラーバンエリア及びラーバンデクラインの視点として, (1)より広域化,ネットワーク化する地域構造を踏まえると,核となる都市を中心とした広域的な地域においてラーバンエリアをどのように捉えるのか,ということが重要である (2)ラーバンを規定するにあたり,田園的な要素を基にラーバン概念を議論すると同時に,都市としての要素を取り込むことも含めて,検討する必要がある.
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