研究概要 |
本年度は,昨年度までに琵琶湖周辺の内湖(付属湖)沿岸で掘削した5地点のボーリングコアの観察結果と年代測定結果および既往ボーリング資料を総合して,堆積物の層相,堆積過程および環境変化過程を比較した.その結果,以下の点が明らかになった.1琵琶湖周辺の内湖は,地形環境おから背後に丘陵があり河川からの堆積物供給量が少ない閉塞型内湖と,三角州低地に位置し河川からの堆積物供給が盛んな開放型内湖に区分できる.2閉塞型内湖の堆積物は連続的な有機質堆積物からなり,完新世中期以降(約7300年前の鬼界アカホヤテフラ降下以降)安定した池沼環境が持続したと考えられる.一方,開放型内湖では厚く連続する有機質堆積物はまれであり,砂や砂礫と泥の互層が卓越する.この砂・砂礫は主として河川から供給されたものと考えられ,このタイプの内湖では池沼環境は比較的短期間(数百年程度)しか持続しなかったと考えられる.3閉塞型内湖においては,歴史時代以前においては高純度の泥炭が卓越していたが,歴史時代に入ってから無機物が多量に含まれるようになった.これは周辺低地の開発など人為の影響による可能性がある.4琵琶湖西岸の高島市南沼と東岸の彦根市曽根沼の堆積物はともに見分解のイネ科植物遺骸を多量に含む泥炭を主体とするが,紀元前2000年前以前は曽根沼に比べて南沼の方が同一年代の層準が3mほど低い地点にある.これは,琵琶湖西岸断層帯の活動に伴う断層帯直東を中心とする沈降運動を反映したものと考えられる.
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