研究概要 |
本研究では,土壌圏の物質循環に果たす粘土の役割と特性を明らかにするため,実験室レベルで粘土中の水分・塩分移動の集中的なモニタリングシステムの構築を行い,その機構解明を試みた。そして,次の3点についての成果を得た。 (1)粘土の透水性と溶液依存性について 異なる種類の粘土に対して交換性Na率(ESP)と土中溶液濃度が及ぼす影響を,浸透実験を行った。それにより,高膨潤性ベントナイトと低膨潤性の有明粘土では溶液に対する反応が大きく異なることが明らかになった。また,交換性Na率(ESP)と土中溶液濃度の異なる高膨潤性のベントナイトの透水性を,圧密試験を用いて評価することにある程度成功した。 (2)水分飽和,不飽和の黒ボク土中の溶質移動特性について 撹乱土と不撹乱土カラムを用いて,飽和及び不飽和定常流れの塩分移動形態より溶質分散係数を求めた。それにより,黒ボク土では,撹乱土,不撹乱土とも団粒構造の影響を受けた溶質移動特性であること,不撹乱土では植物根や亀裂が飽和状態では流れを支配するがその影響は異なること,不飽和状態では,そうした大きな間隙から水分が排出されるため,撹乱土と不撹乱土の違いが小さくなることが明らかになった。 (3)TDR装置による土中水分および電気伝導度測定の測定 TDR装置を用いた,粘質土中の水分および電気伝導度測定精度の向上を目指した室内実験,圃場実験を行った。そして,対象土に対する特定のキャリブレーションを行うことにより,より高い精度で水分量と土中溶液の伝導度を測定することが可能となった。 今後は,本研究で確立した水分・塩分モニタリングシステム,透水係数の評価法をさらに改良を加えて,データの蓄積を図る予定である。
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