研究概要 |
地球温暖化は,資源・エネルギーの大量消費を前提とする現代の経済社会システムに起因しており,現在の科学技術のみでは解決が難しい状況にある。わが国では,2002年5月に京都議定書の締結が国会で可決され,地球温暖化防止に向けた対策が本格化した。また,政府は,これに先立つ2002年3月に新たな地球温暖化対策推進大綱を発表し,京都議定書で取り決められた地球温暖化ガス削減を実現するための基本的考え方として,環境と経済の両立,民生・運輸部門での対策強化など,新たな経済社会システム構築に向けた取り組みの必要性を打ち出している。 以上のように,地球温暖化問題は現代社会の構造的な環境問題であり,効果的な対策に向けては,国内各地域における経済循環構造と温暖化ガス排出との関係を的確に捉えることが必要である。そして,この目的のためには,国全体或いは地域レベルで財貨・サービスの流れを総合的に把握できる産業連関表の利用が有効と考えられる。 本研究では,1985,90,95年の全国9地域間産業連関表と国立環境研究所が公表した二酸化炭素排出量を用いて,地域経済の変動と二酸化炭素排出量との関係を分析するための地域間産業連関モデルを構築した。そして,二酸化炭素排出量変動の要因分析を行った結果,排出係数,産業構造,最終需要の3要因の中では,最終需要の変動が二酸化炭素排出量に最も大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。 そこで,本研究では,各部門における最終需要額の一律削減,二酸化炭素排出量の多い部門を中心とする最終需要削減,環境効率性指標(生産額当たりの二酸化炭素排出量)に基づく二酸化炭素排出量削減部門の設定などのケース設定の下で,二酸化炭素排出削減のシミュレーション分析を行った。その結果,環境効率性指標を用いることにより,生産活動への影響を考慮した効果的な二酸化炭素排出削減が可能であることを示した。
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