研究概要 |
1.酵母酸化ヌクレオチド損傷の浄化酵素YLR151cのヒトホモログの分離・同定の試み 酵母の酸化ヌクレオチド損傷の浄化酵素YLR151cのヒトホモログ候補をcDNA libraryから検索し,高いidentity/similarityを示す候補2種について,大腸菌MutT欠損株で観察されるAT→CGへのtransversionが抑制できるか,精製した候補タンパク質に8-oxodGTや2-OHdATPに対するpyrophosphatase活性が検出できるかを検討した。その結果,両候補とも,YLR151cで見られるような,大腸菌MutT欠損の相補,in vitroでのpyrophosphatase活性は確認できなかった。すなわち少なくとも両候補がYLR151cのホモログであるという結論は得られなかった。 2.酵母アミノ化ヌクレオチド損傷の浄化機構とそのゲノム安定における役割 酵母の脱アミノ化ヌクレオチド浄化酵素Hamlを分離し,dITPに対するpyrophosphatase活性を,さらにLineweaver-Burk plotによりspecific activityが10.6μM-1 sec-1であることを確認した。次にHam1欠損による1倍体と2倍体におけるゲノム不安定化を,それぞれ自然突然変異頻度とヘテロ接合性喪失(Loss of heterozygosity ; LOH)頻度を指標に検討した。その結果,1倍体ではHam1欠損による自然突然変異頻度の上昇は観察できず,ゲノム不安定化は認められなかったが,2倍体でのLOH頻度はHam1欠損により20倍以上上昇した。このことはヌクレオチド損傷の浄化が突然変異のみならず,特に2倍体でのゲノム安定化に極めて重要な役割を演じていることを示しており,ゲノム不安定性の細胞がん化における重要性を考えると,内因性ヌクレオチドと発がんを結ぶ線を浮き彫りにしたといえる。
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