研究課題
基盤研究(C)
我々は、ニワトリ40細胞を使い、動物細胞における様々な修復欠損株作製し、その機能を解析している。本研究課題では、DNA複製時重要な働きをすると考えられるに複製後修復について解析した。複製後修復の重要な2つの経路、すなわち相同組換えと損傷乗り越え修復を同時に欠損した株(ΔRad54/ΔRad18,ΔRad54/ΔRev3)を作製した。その結果、これらの株が染色体断裂を多発して死亡することを見いだした。すなわち、相同組換えと損傷乗り越え修復は、互いにオーバーラップしながら、細胞内でたえず発生している複製停止からの複製再開に必須の働きをしていることを明らかにした。これらは酵母細胞にはみられない動物細胞特有な現象である。動物細胞では複製後修復は細胞生存にとって必須の修復系である。また、複製後修復にrad18欠損DT40細胞が、臨床的に、頻用されている乳ガン予防剤タモキシフェンに高感受性を示すことを発見した。さらに詳細に調べた結果、その感受性はその下流の損傷乗り越えに関わる分子Rev3の欠損でもみられることがわかった。さらに、染色体分析の結果により、その感受性はタモキシフェンが直接DNAに傷を付けているためにもたらされていることを証明した。このように、変異株をつかうことで、様々な薬剤および環境変異物質のDNA毒性を鋭敏に検出できることを証明した。(論文Mizutani et al. Extensive chromosomal breaks are induced by tamoxifen and estrogen in DNA repair-deficient cells. Cancer Res 64,3144-3147(2004).さらに、2重鎖切断に重要な働きをしているヒストンH2Aの亜種であるヒストンH2AXの変異株を作製した。この変異株は2重鎖切断修復、とりわけ相同組換えを介した修復に異常を示した。さらに、相同組換え機能が低下している、XRCC3変異株との2重変異株を作製するとその表現型は致死となった。このように、H2AXは染色体の構成因子であり、DNA修復、すなわち相同組換えが自然発生する染色体断裂の修復に必須であることを考えると、このようなヒストン修飾は組換えを効率よくおこなわせることで、染色体安定性の保持に重要な役割をしていることを証明した。(現在、論文作製中)
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