研究概要 |
1.窒素酸化物によって生じるグアニン脱アミノ生成物の複製エラー誘発活性(Nakano et al.,Mutagenesis,20,209-216) 窒素酸化物によって生じるグアニンの脱アミノ生成物であるキサンチン(Xan)、オキザニン(Oxa)、およびその二次的付加生成物のモデル分子であるオキザニン-スペルミン複合体(Oxa-SP)の生物影響を検討するため、これら損傷を部位特異的に含有する基質DNAに対するDNAポリメラーゼの伸長活性および挿入活性を観察した。大腸菌NAポリメラーゼIの損傷鋳型に対する伸長活性はG(1)>Oxa(0.19)>Xan(0.12)>AP(0.088)>Oxa-SP(0.035)であった。挿入塩基対合性は、Xanに対しTMP(16%)、dGMP(14%)、Oxaに対しdTMP(49%)で、Oxa-SPは極めて高い伸長阻害反応を示した(dAMP;13%)。以上の結果から、これらの損傷が高い頻度で複製エラーを誘発し、重篤な生物影響を示すことを明らかにするとともに、その生物影響の表出機構は、各損傷で異なることが分かった。 2.オキザニンおよびその付加体損傷に対する修復活性(Nakano et al.,Nucleic Acids Res.,33,2181-2191) これまで、よく分かっていなかったOxaおよびその付加生成物の修復機構について検討を行った、はじめに大腸菌およびヒト由来の精製DNAグリコシラーゼおよびHeLa核抽出物のOxa除去活性を検討したが、ほとんど活性が認められなかった。そこで精製UvrABC複合体およびHeLa核抽出物のOxa-SP含有基質に対する活性を検討し、ヌクレオチド除去修復(NER)活性が認められた。以上の結果は、Oxaが生体内で速やかに付加体損傷に変換し、NERによって修復されることを示している。
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