研究概要 |
有機汚濁物質を含む排水の紫外線分解処理における除酸素の有効性について研究した.検討したベンゼンモノ置換体,EDTA,EDTA-金属錯体の分解は一次の速度式に従った.速度定数を測定して,除酸素の効果を評価した. (1)ベンゼンのモノ置換体(置換基:NH_2,OH,CH_3,H,Cl,Br,COOH,NO_2)について,置換基の種類による分解性を評価した.その結果,分解速度は置換基の種類によって,NH_2<OH<CH_3<H<Cl>Br>COOH>NO_2の順となり,NH_2からClまでは電子吸引性の大きい置換体ほど速度は大きくなるが,Clをピークとして速度は減少した.なお,Cl,Br,COOHでは中間体としてベンゼンが検出されたが,NH_2,OH,CH_3では認められなかった.このことから,ベンゼン環と置換基の結合部位が切れる機構と先ずベンゼン環が開烈する機構の二つがあることがわかった.なお,除酸素の効果はCl置換体において最大で,無置換体(ベンゼン)と比較して,約3倍の分解速度の上昇があった. (2)キレート試薬であるEDTAとEDTA-重金属(Mn,Zn,Ni)錯体の紫外線分解挙動を調べた.いずれも,分解効率は低く,とくに錯体は低かった.これらの成分を含む排水の処理には紫外線法は適していないと判断される.除酸素によってもこれらの分解効率の改善はほとんどみられなかった. (3)安息香酸の紫外線分解において,Na_2SO_4やK_2SO_4が分解速度を3.1〜3.4倍促進することを発見した.しかし,NaClでは逆にわずかに分解を抑制した.四塩化炭素の分解ではこれらの塩類の効果はほとんどみられなかった.このような無機塩の添加による促進効果は紫外線分解法の新しい可能性を示唆するものであり,本研究の大きな成果のひとつである.
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