研究概要 |
薬物代謝酵素として知られているチトクロームP450(以下,「P450」)は種々の合成化学物質を代謝できる。そこで,細菌が産生するP450による内分泌撹乱化学物質の分解を検討するとともに,そのP450による内分泌撹乱化学物質の制御の可能性について研究した。 2-ethoxyphenolを単一炭素源とした培地を用いて,環境中から分離したP450産生細菌Rhodococcus sp. strain EP1及びGordonia sp. strain EP4による内分泌撹乱化学物質の代謝について検討した。2-ethoxyphenolを炭素源とした培地に,内分泌撹乱化学物質を共存させたときの菌の増殖と内分泌撹乱化学物質の分解を検討した。その結果,EP1株及びEP4株はDi-n-butyl phthalate, Di-n-propyl phthalate, Diallyl phthalateを分解できることが明らかとなった。 EP1株及びEP4株の無細胞抽出液と,それぞれの無細胞抽出液から精製したP450_<EP1>及びP450_<EP4>による内分泌撹乱化学物質の分解を検討した。EP1株の無細胞抽出液はフタル酸類とDDTを分解した。一方,EP4株の無細胞抽出液はフタル酸類を分解したが,DDTは分解できなかった。精製したP450_<EP1>及びP450_<EP4>はフタル酸類だけでなく1,1,1-trichloroethane, carbon tetrachloride, benzene and tolueneも分解することができた。 本研究では,環境中の細菌がどのような状態の時にP450を産生し,そのP450が内分泌撹乱化学物質の分解にどの程度関与しているかを明らかとした。この結果は,内分泌撹乱化学物質の生物学的処理への応用だけでなく,環境中に放出された内分泌撹乱化学物質制御方法の確立につながるものである。
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