研究概要 |
本研究は,エネルギーの効率的な利用と省エネルギーを実現する環境負荷低減型の化学反応システム,具体的には反応器の金属面を直接触媒化した壁面型触媒反応システムの構築を目的とし,そのためのプレート型触媒の調製から最終的にはシステムの特性評価,ならびに数値シミュレーションによる特性予測を行なったものである。三年間にわたる研究成果から,システム構築のための最適なプレート型触媒の創製が行なわれ,またシステムの正確な特性解析や数値シミュレーションによるその予測が実施できた。以下に得られた知見の要点をまとめて示す。 1.反応側チャンネルと熱媒側チャンネル(流路高さ3〜5mm)を交互に積層し,反応側に高い吸熱反応活性を示すプレート型触媒をカートリッジ方式で挿入した壁面型触媒反応システムを構築した。構築した装置で実験を実施し,大きな熱エネルギーの消費が生じる反応条件下でも反応器内は設定温度にほぼ沿った温度分布を示し,熱エネルギーの供給が効率的であることを確認した。 2.反応側チャンネル内に挿入するプレート型触媒の形状が装置の性能に影響を及ぼし,原料ガス流れを乱す形状にすることで装置性能が向上した。また,チャンネル高さを小さくしてリアクターをコンパクトにすることで性能が向上した。いずれも物質移動や伝熱係数め向上が大きく関与している。また,この反応システムは圧力損失が小さく,負荷変動に対して迅速な応用性を示す。 3.プレート型触媒の調製法として採用した無電解めっき法は,種々の化学反応に対して活性な触媒を調製することが可能であり,本反応システムの適用性を広げる触媒調製法であることがわかった。 4.壁面型反応システムの応用・展開を検討するため,吸熱反応と発熱反応が同時に起こるチャンネルを交互に積層した壁面型反応システムを想定し,数値シミュレーションから特性予測を行なった。吸熱と発熱の相互利用を図る場合でも,本反応システムは熱エネルギーの交換が効率的であり,均一な温度分布と高い反応率を維持できる。展開性が充分にある反応システムである。 以上,3年間の研究成果を総合的に判断して,本研究の当初の目的は達成したものと考えられる。
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