研究概要 |
ピレン資化性細菌H2-5株を栄養培地(Tryptic soy broth, TSB)とピレンを唯一の炭素源とする培地(MMP)それぞれで生育した菌体から産生するタンパク質を抽出し、それらの発現の違いからピレン分解に関係する酵素タンパク質を特定する目的で実験を行った。H2-5株をそれぞれの培地で培養し、菌体を1/15Mリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄後、超音波破砕し、18,000xg,15minの遠心分離で、cell debrisおよび未破壊菌体を除去した。この上清(S1)を183,000xg,60minの超遠心分離を行い、可溶性画分(S2)と沈殿(膜画分,P2)に分離した。各画分を2次元電気泳動にかけて解析した結果、P2では、約50kDaに3個の、約40kDaに4個程、また、約20kDaに1個のMMP生育に特異的なスポットが見られた。S2にもピレン資化時に特異的に発現するスポットが確認された。しかし、スポットが不鮮明であったため、新たなピレン資化性細菌として、H2-5株に近縁なNo.3株とNo.4株を加えて検討を行った。さらに、タンパク質スポットの比較により一層適切と思われる酢酸塩培地を用い、MMP生育とのタンパク質スポットの差を比べた。しかし、得られるタンパク質量が少ないため、菌体を超音波破砕したあと、遠心分離した上清(S1)をそのまま二次元電気泳動にかけた。さらに、泳動試料の塩濃度を下げるため、S1画分のタンパク質をトリクロル酢酸で沈澱させ、沈殿を直接Lysis Bufferで溶解した。その結果、ピレン生育時に特異的に増大または発現するタンパク質を、No.3株では9個、また、No.4株では7個確認することができた。
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