研究概要 |
(1)Fe, Co, Ni, Mn, Mgを含むナノ微粒子を作成した。Co-0系では粒径が3nm程度のCo304ができていることがわかった。バルクのCo304はネール温度がT_N=33Kの反強磁性であることが知られているが、本ナノ微粒子ではその反強磁性転移温度は消失し、10K付近にブロッキング温度T_Bが観察された。 以下では強磁性的振る舞いが見られ、Co1イオンあたりの磁化を算出したところ、通常の約2倍の8.4μ_Bもの値を持つことがわかった。放射光を利用したXAFS測定による局所構造の解析からは、X線では判別できなかった3nmの試料でもCo304が成長していく様子が確認できた。 (2)Mn-0系については、焼成条件によりMn304あるいはMn203ができることがわかった。このうちバルクではTc=40Kの強磁性として知られているMn304について焼成温度やpHを調整して粒径の制御を行い、磁気特性と局所構造を詳細に調べた。粒径は2.5nmから33nmのものが得られたが、磁化の温度変化は複雑な振る舞いを見せ、粒径が大きくなるにつれブロッキング温度が高くなる傾向はあるが、2.5nmのものは極めて磁化が大きかった。XAFS測定の解析結果からはこの試料に関してのみ周期性が良くなっていることがわかった。 3)鉄の酸化物に3d遷移金属をドープした、Ni-Zn ferrite, Mn-ferrite, Mg-ferriteなどの多元系フェライトの作成にも成功した。このうちNi-Zn ferriteについてはNi-ferriteのAサイトに非磁性のZnをドープすることにより、磁化の大きさや透磁率が増大する興味深い結果を得た。これはこれはA, Bサイトがネールの理論に従い、反平行にオーダーしていることを示唆している。NixZn1-xとした場合、x=0.7にピークを持つことがわかった。Mn-ferriteはAr雰囲気中で焼成することにより、単相の試料を得ることができた。この系は粒径が数ナノでも室温で強磁性的振る舞いが見られた。Mgは非磁性であるが、熱処理条件によりフェライトのAサイトに入りこむことでMg-ferriteの磁化が変化する可能性があることがわかった。
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