研究概要 |
本研究では、リチウムイオン導電体の高機能化のために、この物質に微粒子混合した効果やバルクおよび界面のリチウムイオン伝導機構の解明を目的としている。本年度の成果をまとめる。 1.リチウムイオン導電体としてペロブスカイト型酸化物(La,Li,Ti,Oからなる)を選び、この物質に微粒子TiO_2(粒子径0.05μm)を分散した複合型物質を研究した。TiO_2の濃度に対する導電率依存性は、約10%〜40%濃度でバルク伝導および界面伝導とも約30%増加した。しかしながら、予想していた1桁から2桁の増加が見られなかった。電子顕微鏡観察による結晶粒の構造は、TiO_2が微粒子として存在せず、母体の結晶と同じように結晶粒となって成長していた。これが微粒子効果を軽減していると思われる。今後は、焼結温度を低くするなど結晶作製条件の検討を行い、TiO_2の微粒子効果を解明する必要があることがわかった。 2.BサイトTiをAl,P,W,Zr,Mgで置換した新規物質を開発し、そのミクロ構造と導電率の関係を調べた。AlとP置換物質は低濃度側で導電率が増加しTiを置換する有用性が見られたが、他のW,Zr,Mgはいずれも大きく導電率が減少した。これらの振舞はおおよそ、Laの1aおよび1bサイトの占有率およびボトルネックサイズから説明がついたが、今後はNMRや電子状態計算からリチウムイオン伝導を解明する必要がある。 3.クラスターモデルによる母体のリチウムイオン導電体の電子状態を計算した。この計算で得られた酸素イオンの電子状態とリチウムイオンのまわりの構造(原子間距離など)から、NMR測定から得られたリチウムイオンの化学シフトの濃度依存性を説明した。この成果は、結晶中のリチウムイオンの位置が1bサイトに存在する可能性を示した。
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