研究概要 |
本研究では,企業のSCMのレベルを測るSCMロジスティクススコアカード(LSC)を用いて,十分なデータ数の中,SCMの性能を決める3つの要因,SCM組織力,情報技術活用力,変化対応力の3つを発見した. この3つのSCM性能,特にSCM組織力が最終的な経営成果としてのROA,一株あたりCFと統計的有意な正の相関を示すことを明らかにするとともに,SCMの効果として,在庫の削減によるコストの低減がなされ,そして資産が圧縮されるとキャッシュフローの増大に繋がり,そして最終的に収益性の向上に繋がっていると一般的に言われていたものを,時系列の流れで定量的に捉える事ができた. さらに,この結果を踏まえ,データを層別した分析を行ったところ,SCM組織力,情報技術活用力,変化対応力はある程度のレベルでないとほとんど経営成果と相関がない事,そしてそのレベルを超えると経営成果と非常に相関が高くなるという,本研究において最も特筆すべき事柄を発見した.また,業界毎に層別をし,業界別の特徴を捉えると同時に,要因を抽出した意味を併せて示している. 財務成果とは違う非財務的業績評価指標との関係も分析では,優れた会社,売上高物流コストともに正の相関が見られている.特に優れた会社との相関は有意であり,SCMにおいて外部要因への影響を示すと同時に,LSCの信頼性を高める結果が得られている. 最後に,本報告で用いたデータ,分析をベースとしたLSCの診断システムを開発しており,レーダーチャートや業界平均,散布図などを素点,因子ごとに表示し,企業の評価が出力されるようになっている.本研究で得られた結果は,このような因子で診断することの妥当性と意味付けを与えるものである.
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