研究概要 |
研究の目的は,サプライ・チェイン・マネジメント(SCM)で必要とされる最適化問題の良質な解をWeb経由で提供するための基礎技術の開発である.具体的には在庫方策,安全在庫配置,ロジスティクスネットワーク設計,ロットサイズ決定,機械スケジューリング,配送計画,需要予測,収益管理を扱った.これらの問題の解をアプリケーションサービスプロバイダー(ASP)として提供するための基礎技術を開発した. 顧客が手元のコンピューターで問題を解く場合と異なり,ネットワーク上で問題や解をやりとりするため,それに適した問題や解の表現形式を開発した. ASPの一つのサーバーに問題求解要求の負荷が集中すると,一つの問題あたりの計算速度が落ちるため,十分良質な解を顧客に提供できない.よって複数のサーバーでの分散計算に適したアルゴリズムを開発した.具体的には,整数計画問題の緩和問題(あるいは部分問題)を近傍探索に用いる大近傍ヒューリスティクスを開発した.計算機の計算速度の向上や数理計画法理論の充実に伴い,大近傍ヒューリスティクスは近年最も注目されている体系である.より良質な解を計算するためにグリッド技術の利用も取り入れた.グリッド計算では応答時間を見積もれず,最悪の場合,応答が返ってこないこともある.以上をふまえ,応答が返ってこなくても処理が中断されないロバストなアルゴリズムを開発した.これは従来の並列計算で用いられてきたアルゴリズムとは異なるアルゴリズムである.本研究の成果をソフトウェアとして実装し,Web上で公開し,エンドユーザーの便宜を考慮し親切な解説を付けた.本研究で得られた学術的成果は国内外のオペレーションズ・リサーチあるいは離散アルゴリズム関連の会議,論文誌,機関誌を通じて発表した.また,初心者がこの成果を比較的簡単に利用できるようにするため入門書も出版した. 比較的高価であり敷居が高いと言われてきたSCM最適化ソフトウェアの敷居が下がったことは間違いない.
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