研究概要 |
生産システムには種々の不確実性が存在するが,それらの影響を受けにくいスケジュールをどのようにして求めればよいかは重要な研究課題である.本研究はスケジュールにしばしば存在する避けられない遊休状態を有効に活用することで,処理時間の延びという不確実性の影響を受けにくいスケジュールに関する研究を行った.具体的には(i)処理時間の延びの影響を受けにくい不安定性最小スケジュールを効率よく求める方法の開発,(ii)不安定性最小スケジュールとメイクスパン最小スケジュールの関係の調査,(iii)問題をいくつかの部分問題に分割して解くという分割スケジューリングへの応用,の3つの課題に重点的に取り組んだ.スケジュールの不安定性最小化については下界値の計算法に新たな提案を行うとともに,分枝限定法に基づく不安定性最小化における探索木の作り方として,各ノードに実行可能なスケジュールを対応付ける方法を提案した.不安定性とメイクスパンの関係についてはアクティブスケジュールの全列挙により調査を行い,両者を同時に最小化することは一般に困難であることや両者の競合の度合いが比較的ゆるやかであること,それぞれの最小スケジュールの数が少ないことなどを明らかにした.分割スケジューリングにおいては,部分スケジュールの重ね合わせの際の競合の影響を和らげるために不安定性最小なスケジュールを用いることを提案し,同じメイクスパンであっても不安定性最小なスケジュールが,不安定性最大なスケジュールよりも良い結果を生み出しやすいことを実験的に明らかにし,分割された個々の部分問題に対しメイクスパンのみならず不安定性も目的関数に組み入れることが有望であることを示した.
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