研究概要 |
信頼度の高い地震予知を実現しようとすれば,まず地震発生に至る過程を詳細に明らかにしなければならない.本研究は小繰り返し地震(相似地震)を用いてプレート境界の挙動を調べ,それによってプレート境界型大地震の発生にいたるまでの過程を明らかにし,さらには津波地震についても知見を深める事を目的として実施された. 本研究によって明らかになった三陸沖プレート境界の特徴は以下のとおり. 1.プレート境界では準静的すべり域(非地震性すべりが卓越する領域)に囲まれた大小様々なアスペリティ(地震性すべりが卓越する領域)が存在している. 2.孤立したアスペリティでは,同規模の地震がほぼ一定の再来間隔で繰り返し発生する. 3.ただし,常に単独のアスペリティが破壊する場合でも,まわりの非地震性すべりの挙動によっては,完全に波形が同一な地震が生じるとは限らない. 4.複数のアスペリティがある程度近接している場合,アスペリティでの地震性すべりとそのまわりの非地震性すべりの「連鎖反応」によって,群発地震や余震域の拡大が生じる. 5.さらにアスペリティ問の距離が狭い場合,これらのアスペリティ群全体を壊す地震と,一部のアスペリティのみを壊す地震が生じて,地震発生サイクルは複雑となる. 6.大地震発生の数時間〜半年前くらいの時期に近傍で中規模な地震が発生し,その地震と余効すべりによる応力場の擾乱が,来るべき大地震の発生を促進することがある. 7.プレート境界の間隙水圧はかなり高く,有効法線応力は静岩圧の1/10くらいになっている可能性がある. 8.1896年の三陸津波地震を発生させた領域の西部では,小繰り返し地震の活動が活発であり,このことは準静的すべり域の中に多数の小さなアスペリティが存在している事を意味している.またこの付近で低周波の地震も多い.これらの結果はSeno(2002)の津波地震のモデルとは整合する.
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