研究概要 |
理論設計と実験を併用することで,構造特異性を持つタンパク質を人工的に設計することを目的とし,構造配列適合性関数の開発,新規設計手法の開発,および実験検証などを実施した.また点突然変異体の解析,安定性予測,フォールディングのシミュレーションや実験なども行い,得られた知見の設計への反映を試みた.新規構造配列適合性関数としてはラマチャンドランプロットを利用した局所構造関数を開発した.12種類の1部位構造コード (Single Site Conformational Code:SSCC)とアミノ酸配列について統計ポテンシャルを作成し,適合度の評価能を調べた.2種類のデコイを用いて調べた結果,DSSPで定義した局所構造を利用した関数よりも精度が高かった.新規設計手法の開発としては近縁タンパク質ペアの立体構造を利用した,機能転換を目指したデザインを行った.ミオグロビンの構造を利用し,汎用モデリングツールである modellar と 3Dプロフィールを用い,フィコシアン配列をミオグロビン構造に適合しヘムと結合するよう10数個の置換を導入した.配列を実際に合成して構造特性などを実験的に調べたところ,そこそこのαヘリックス含量を示し,弱いながらヘムを結合した.この方法とは別に,フィコシアニンの構造にヘムが挿入されるような空間を開けるという方法で設計した配列は,良好な構造特異性とヘム結合能を示した.これまで継続して取り組んできた研究であるが,CROリプレッサのデノボ設計に関してはNMRでの立体構造決定に至り,成果を出版することができた.
|