研究概要 |
本研究では,in vitroでセレクションされた機能性RNAをin vivoで利用可能な分子とすることを目指し,新規なヌクレオシドトリリン酸体を合成し,in vitro selection法による機能性人工RNA創製のための基礎研究を行った.すでに4'-thioUTPおよび4'-thioCTPの合成を完了し,予備実験において両トリリン酸体がT7 RNAポリメラーゼの基質となることを明らかにしている.平成15年度はその結果をふまえさらに詳細にin vitro selection法への応用のための基礎的研究を行った.その結果,4'-thioUTPおよび4'-thioCTPは天然型UTPおよびCTPと比較して約90%の効率でRNA鎖に取り込まれる事が分かった.さらに得られた修飾RNAは逆転写酵素によってcDNAへと変換でき,シークエンシングの結果,その配列に誤りがない事が確認できた.これにより4'-thioUTPおよび4'-thioCTPはin vitro selection法に適応可能であることが示された.またヌクレアーゼに対する抵抗性についてもRNase Aを用いて調べた結果,修飾RNAは天然型RNAと比較して50倍安定であることが明らかになった. 以上の結果を受け,平成16年度はヒトトロンビンに対するin vitro selection法による修飾RNAアプタマーの獲得実験を行った.中央部に30merのランダム配列を有するテンプレートDNAを用いて4'-thioUTPおよび4'-thioCTP存在下,転写反応を行い4'-thioRNAライブラリーを調製し,ヒトトロンビンに対してセレクションを行った.その結果,10ラウンド後にはヒトトロンビンに対して結合する配列へと濃縮された.得られた4'-thioRNAのシークエンシングを行ったところ3つのファミリーに分類できた.その中の一つの配列はヒトトロンビン対して特異的に結合する配列であり,2次構造予測から37merの4'-thioRNAが示唆された.その4'-thioRNAを化学合成しヒトトロンビンに対する親和性を調べた結果,K_d=4.7nM(比較として親和性を調べたRNAアプタマー;K_d=85nM)を示した.
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