研究課題/領域番号 |
15510215
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
ジェンダー
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
持田 ひろみ (曽根 ひろみ) 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (10179385)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
2005年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
2004年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2003年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
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キーワード | 近世史 / 法制史 / ジエンダー / 刑事裁判 / 家 / 主従 / 親子 / 夫婦 |
研究概要 |
本研究は、「近代」とは異なる、近世社会に固有のジエンダー秩序の特質を、刑事法制の面から解明することを目標とした。明らかにできた研究成果は、以下の二点である。 第一は、刑事法制にみる「家」的ジエンダー秩序とは何かについて、明確にしたことである。具体的には、「家」内における殺傷事件の加害者・被害者を、主従・親子・性差の三つの視点を交差させて分析することで、主殺し・親殺しは、殺害される主人や親の性差(女主人・母親)に関わらず、また殺害犯人の性差にも関わらず、全く同等に厳罰に処されることがわかった。すなわち、「家」内においては、被害者・加害者の性差は問題とされず、両者がいかなる親族関係・社会的身分関係にあるのかによってのみ処罰されるということである。本研究では、性差より主従・親子といった社会的身分差の方が決定的な規範として作用する秩序を「家」的ジエンダー秩序と名づけた。 第二は、「家」外のジエンダー秩序のあり方である。一見、性中立的な近世の刑事法制でも、「家」外で起こった事件の実際の裁判過程では、武家から百姓・町人にいたる様々な身分・階層の女性を一くくりに「女」として、男性とは異なる論理のもとに裁いた。それは男女共犯事件において顕著にみられるように、女性が男性の教唆・誘導に容易に従う主体性の脆弱な無思慮な存在として、またそれゆえに「保護」されるべき性として扱ったということである。 以上より、近世的ジエンダー秩序は、一方で人々に性差に関わらず身分や社会的地位に応じた刑事責任を求めるものであり(「家」的ジエンダー秩序)、他方で「女」を「男」より劣った存在として差異化し「保護」する(責任を軽減する)ものであった(「家」外のジエンダー秩序)。近世社会は、これら二つのジエンダー秩序が、時期や地域によって異なる様相をみせつつ並存したものであったといえよう。
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