研究概要 |
農環境の倫理への自然の権利論的・徳倫理学的アプローチと題される本報告書は,本論(第1部〜第4部),補論(第5部),付論(第6部)の3つから構成されている。本論では,第1部でアメリカの環境倫理学に関する基本的内容を整理・確認した。取り上げた内容は,環境倫理学と応用倫理学,環境倫理学の背景と形成,初期の環境倫理学論争である。第2部では,自然の権利について,第3部では,環境問題への徳倫理学的アプローチについて批判的考察を行なった。そして,それらをふまえたうえで,第4部では,農業倫理学,環境倫理学,生命倫理学を統合するものを「生命圏倫理学」と呼び,その主要課題について倫理学的視点から明らかにし,この分野の研究の方向性の確認を試みた。この主要課題とは,(1)食料の安全性の問題,(2)農業資源の枯渇の問題,(3)自然環境・生態系の破壊の問題,(4)工場的農業のあり方と動物福祉・自然の権利の問題,(5)食料生産の独占的支配の問題,(6)家族農業の減少の問題である。第5部は,本論の内容を直接に補足するものであり,補論として掲載した。第6部は,研究期間に行なったドイツの哲学者マックス・シェーラーの思想研究の成果であり,本論とは直接には関係ないようにみえるが,その思想的内容は本論の内容と関連を有すると思われるので,付論として掲載した。各章は連続してはいるが,単独の論考としても読めるような記述をしている。繰り返しの記述が一部あるのと,引用・参考文献表を章ごとに付したのはそのためである。
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