研究概要 |
研究期間の3年間を通して私の『インド仏教文学梵語文献研究史』の原稿を補完するための執筆作業と写本研究を行なった。原稿執筆に関連して行なったインド仏教文学梵語文献の諸作品に対する写本研究の成果は,以下のとおりであり,それぞれ単立の論文として発表された。 [1年目の成果:]アッガンニャ神話の箇所について有部とパーリ上座部と大衆部説出世部と犢子正量部の伝承を明らかにし,『マハーヴァストゥ』の中の写本Saのローマ字転写(103a1-107b2)を行なった。また美文体の仏教文学作品『マハーサンヴァルタニーカター』の第2章4節〜第4章1節の翻訳を行なった。 [2年目の成果:]『マハーサンヴァルタニーカター』の第5章2節〜4節の翻訳を行なった。また犢子部正量部の成立年代について考察した。 [3年目の成果:]梵文仏教説話文献『スバーシタ・マハーラトナ・アヴァダーナマーラー』の写本を読み,「アヴァダーナ・シャタカ系列の説話群」と『アヴァダーナ・カルパラター』の関係を考察した。また『アヴァダーナ・カルパラター』とアヴァダーナマーラー文献群の間の借用関係を明らかにし,ネパールにおいてアヴァダーナマーラー文献群が作られた年代を考察した。また『ジャータカマーラー・アヴァダーナスートラ』の写本を研究し,冒頭の2章の内容を確認した。また『マハーサンヴァルタニーカター』の第1章1節〜3節の翻訳を行なった。
|