研究課題
基盤研究(C)
本研究は、「宗教言説」という概念をキーワードとして、近現代における宗教についてのさまざまな「語り」を全体的にとらえ、そのなかで近代的宗教概念がいかに生成してきたかを解明することを目的としてなされた。この問いはまた、今日なお「宗教」について語ることはいかにして可能か、という方法的かつ実践的な問題をも問い直すものであった。研究にあたっては、特に「宗教経験論」および「未来の宗教論」という二つの研究領域を設定することにより、この問題を具体的に論じるための足がかりとした。別記の一連の論考や研究発表、さらに著書を通じて明らかとなったのは、宗教概念がいかに近代性の自己理解と不可分のかたちで生成し、展開してきたかということであった。ヨーロッパにおいては、キリスト教の自明性の動揺と、いわゆる世俗的な世界領域の成立を背景に、あるときは近代性の他者として、あるときは近代性の起源や、あるいは近代性を補完すべきものとして、実に多様な宗教理解が展開された。欧米にならって近代化をとげた日本においても、近代性の導入と宗教概念の導入が同時期になされたことにより、きわめて短期間のあいだにまた日本独自の条件下において、同様に多様な宗教言説の展開がみられた。総じて欧米においても日本においても、近代化の生成過程においては、宗教は近代性に反するもの、あるいは近代化に応じたかたちで変容すべきものとして概念化されることが多かった。他方で近代性が深まり、近代性のもたらす危機が語られるようになると、近代性に対するオルタナティヴな認識・価値領域として宗教が語られるようになる。こうした対比は、両時代の宗教経験論や未来宗教論を比較することで、非常に明確に浮かび上がってくる。本研究はまた、こうした宗教言説の分析を通して得られた歴史的知見が、現在における宗教言説の形成のための欠くことのできない前提条件であることをも明らかにした。
すべて 2006 2004 2003 その他
すべて 雑誌論文 (13件) 図書 (3件) 文献書誌 (4件)
宗教とモダニティ(竹沢尚一郎編)(世界思想社刊)
ページ: 107-136
宗教哲学研究 第23号
ページ: 1-15
130007618060
Shoichiro Takezawa(ed.), Religion and Modernity
Shukyo Tetsugaku Kenkyu(Studies of Religious Philosophy)
宗教とモダニティ(竹沢尚一郎編)(世界思想社)
宗教と社会 通巻10号
ページ: 105-116
Shukyo to Shakai(Religion and Society) Nr.10
宗教と社会 第10号
<宗教>再考(島薗進, 鶴岡賀雄編)(ぺりかん社刊)
ページ: 15-40
岩波講座宗教I 宗教とはなにか(岩波書店刊)
ページ: 23-54
Susumu Shimazono/Yoshio Tsuruoka(eds.), "Religion" Reconsidered.
Iwanami Koza : Religion 1, What is Religion?