研究概要 |
本研究は、ポール・ヴァレリー(1871-1945)の代表的散文『註と余談』(1919年発表)について、フランス国立図書館所蔵の草稿「レオナルド関連草稿LEONARD DE VINCI I,224 ff.(Introduction a la methode de Leonard de Vinci, ff. 1-105, Note et Digressions, ff. 106-224.), NAF 19054, Microfilm 4234.」の精密な解読と手書き原稿の完全活字転写作業を実行したうえで、テクスト全体の詳細な分析を行うことによって、傑作の生成の舞台裏を明らかにすることを目的とする。平成15年度は、2004年3月に集中的な出張を組むことによって、フランス国立図書館西洋手稿部での実地筆写を敢行した。また、それに先立ち、日本ヴァレリー研究センター(一橋大学大学院言語社会研究科恒川邦夫教授研究室)設置の他の草稿資料との比較検討や手稿をめぐる諸問題に関する在京ヴァレリー研究者との討議のため、二度にわたってセンターへの出張を行い、予備的な資料収集にあたることができた。以上の作業に基づいて、平成16年度は、さらにセンターへの出張を重ねて、研究の推進に必要な資料の補強をはかると共に、ほぼ網羅的に筆写を終えた研究対象手稿資料(筆写ノート二冊分に相当)に内在する問題点の明確化、刊行テクストとの照合による執筆経過の推定といった実質的な第二次作業を行い、その作業をほぼ完了した。研究成果報告書では、『註と余談』関連草稿を冒頭部草稿群、ノンブルつき草稿群、結末部草稿群の大きく三つに分けて提示し、1919年版『註と余談』刊行テクストと合わせて紹介した。結果として、『註と余談』の草稿の主要部分がカバーされ、生成論的テクスト読解に不可欠な資料が形成されたと言うことができる。
|