研究課題
基盤研究(C)
19世紀から20世紀のドイツ語散文の展開については、2003年日本独文学会秋季研究発表会で研究代表者が主催したシンポジウム「ディアスポラの文学」において、フランス文学者、アメリカ文学者の協力の下に展望するかたちで『ディアスポラの文学』という論文集にまとめ、日本独文学会研究叢書の一つとして刊行した(2004年度)。20世紀ドイツ語散文の言説分析の上で重要な、精神分析的なテキスト分析については、ゲーテのテキスト『新しいメルジーネ』を手がかりとして、ラカン的な視点からその作品を解釈する試みを、ドイツ語の論文としてまとめ、日本ゲーテ協会の『ゲーテ年鑑』(2004年度)に発表した。このラカン的な読解は、ゲーテの全長編に拡大して、別な日本語の論文としてまとめ、『多元的文化の論理』(2005)に収録した。単著として発表した『物語と不在』(2005年度)では、ムージルの小説の詳細な分析を行い、同時に西欧マルクス主義の代表的思想家ルカーチ、実践的マルクス主義者であるレーニン、精神分析の創始者フロイト、現代のフロイトの読み手であるラカンらの思想とテキストを、ムージルの思想とテキストと比較検討した。対象とした時期において、文学的な問題は、政治的な問題と密接に関係しており、それはリオタールの言う「大きな物語の喪失」と関連している。マルクス主義的言説が大きな物語の形成を念頭においていたとすれば、ムージルに代表されるオーストリア小説の試みは、はじめからそのアンチテーゼを提示する要素を色濃く持っていた。このアンチテーゼの線において、ラカンの思想の文学性の問題も捉えることができる。以上は、より一般化して歴史と物語の問題として捉えることが可能であり、それは、今日「歴史以後」の歴史家とみなされる19世紀の歴史家ブルクハルトにおいても、すでに顕著な問題であったことを明らかにした。
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東北大学文学研究科研究年報 55
ページ: 141-158
The Annual Reports of Graduate School of Arts and Letters, Tohoku University Vol 55
ゲーテ年鑑 46
ページ: 1-18
ゲーテ年鑑 47
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Goethe Jahrbuch 47
ゲーテ年鑑 46巻
Goethe Jahrbuch 46