研究課題/領域番号 |
15520176
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
ヨーロッパ語系文学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三谷 研爾 大阪大学, 文学研究科, 助教授 (80200046)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2005年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2004年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2003年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | プラハ / ドイツ自由主義 / ナショナリズム / 任意団体 / モダニズム / アイデンティティ / 都市化 / 都市小説 / 多民族社会 / 文化的アイデンティティ / 流動性 |
研究概要 |
本研究では、典型的な中欧の多民族都市であった世紀転換期のプラハにおいて、言語的マイノリティに転落したドイツ人が、意識的に推進したドイツ文化アイデンティティ強化の動きと、それに拮抗して若い世代のユダヤ系知識人層のあいだに生じた美的モダニズムの相互作用を、従来かならずしも十分に研究されてこなかった前者に重きをおいて検討した。ボヘミア地方でのナショナリズム的対立が顕著となった1880年代以降、自由主義的ブルジョワジーの主導するドイツ人コミュニティは、プラハ市議会およびボヘミア州議会でも発言力を喪失した。その結果、彼らは活動の舞台を各種の任意的な社交サークルやグループに移した。それらの団体を統括する上部組織ドイツカジノを中心に流通する各種の言説を精査すると、ドイツ人の「文化」がチェコ人による「政治」に対置・称揚されていることが確認できる。しかも、ここでいう「文化」は理念的内容よりも、相識的コミュニケーションに支えられた人的結合という形式的側面が重要視されていたと解釈される。このような形式的性格の強い文化概念にもとづくナショナルアイデンティティの強化は、プラハ・ドイツ人社会の閉鎖性を高める方向で機能し、いわゆる「社会的ゲットー化」をもたらすプッシュ要因となった。これにたいして若い世代の知識人は、文化概念の再定義をこころみることをとおして、閉塞状況を打開するオールタナティヴを形成せざるをえなかったといえる。本研究により、プラハがドイツ語圏モダニズムの拠点となった社会的背景を以上のように理解することが可能となった。
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