研究課題
基盤研究(C)
本研究課題に関しては、平成18年2月に研究成果報告書『自伝のエクリチュールと黒人の自己形成に関する文化史的研究』をとりまとめた。これは、平成16年2月に公刊した拙論「J.W.ジョンソン『元黒人の自伝』と「二重意識」」に、平成9年2月に『九州大学英語英文学論叢』第47集に掲載したアーネスト・ゲインズ論を一部改筆した論文「南部史を書き直す--アーネスト・ゲインズ『ミス・ジェイン・ピットマンの自伝』」、および書き下ろしのリチャード・ライト論「リチャード・ライト『ブラック・ボーイ』と自伝のエクリチュール」、さらにラルフ・エリソンの『見えない人間』を扱った、これも書き下ろしの小論「ラルフ・エリソン覚書--『見えない人間』論のための予備的考察」を加えたものである。平成17年度に執筆した上記の書き下ろしの二論文のうち、自伝的著作『ブラック・ボーイ』を取り上げたライト論は、ライトが伝記的事実を改変したり、実在の人物の性格造型を歪曲したりすることによって、「武器としての言葉」によって闘う者という自己像を築き上ていくありように自伝のエクリチュールの発動を認め、同時に、ライトの自己形成が自伝を書く営みとしての自伝のエクリチュールをなぞっていることを指摘したものである。一方エリソン論では考察の対象を『見えない人間』の第1章に限定して、そこに見られるバトルロイヤルとそれに続く主人公の演説のエピソードが、テクストの内部と外部の両方に相互関連や呼応関係の網の目をはりめぐらして、リチャード・ライトの直線的な自伝のエクリチュールをいかに換骨奪胎しているかを示した。なお、本研究課題に間接的に関連するものとしてアンドルー・ライトルの短篇「エリコ、エリコ、エリコ」を論じた「アンドルー・ライトルと<旧南部>の崩壊」を田島松二編『ことばの楽しみ--東西の文化を越えて』に発表した。
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ことばの楽しみ-東西の文化を越えて(田島松二編)
ページ: 333-346
Newly written
The Ways With Words : Beyond the East and West (Tajima, Matsuji, ed.)
ことばの楽しみ-東西の文化を越えて(田島松二(編))
Studies on Social Development (Tokumi, Michio, ed.)
ページ: 27-35
The Kyushu Review
ページ: 1-14
Eigo Seinen Vol.150, No.8
ページ: 12-14
The Kyushu Review 9
英語青年 150・8