研究概要 |
本研究課題は、南北戦争前のアメリカにおける奴隷解放運動とコンコードの文学との関係を検証するものである。特に、ラルフ・W・エマソンとヘンリー・D・ソローの文学テキストを奴隷解放運動という同時代の政治思想のなかに置き直して歴史化する作業であり、奴隷解放運動の検証と文学テキストへの影響の考察という2点を基軸として進められた。 平成15年度は、南北戦争前のマサチューセッツ州コンコードおよびボストン周辺における奴隷解放運動に関する調査を進めた。2003年夏ペンシルヴァニア州立大学に3週間滞在し、ウィリアム・ロイド・ギャリソンらの「奴隷制廃止運動」や逃亡奴隷の支援組織「地下鉄道」について調査し、資料を収集した。この成果は、「奴隷解放運動と『ウォールデン』-「より高い法則」をめぐって」(『英語英文学論叢』55集,2005年)に結実した。 平成16年度は、奴隷解離運動とロマン主義文学との関連について、特に超絶主義思想の観点から研究を進めた。この方面の研究成果としては、「ソローにおける身体の論理」『新たなる夜明け-「ウォールデン」出版150年記念論集』,金星堂、2004年)、『自然と文学のダイアローグ-都市・田園・野生』(共編著、彩流社、2004年)、「境界の文学-『ウォールデン』論」(ミネルヴァ書房、近刊)、などが挙げられる。
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