研究概要 |
本研究の目的は、(1)アメリカにおける文芸創作教育のプログラム全般を、現地でのフィールドワークによって調査する。(2)アメリカの文芸創作教育の歴史について文献研究を進める。(3)これらの成果を、日本での文芸創作教育の実践に応用する。以上の3点である。 これらの目的に即して得られた成果は、以下のとおりである。 1 文芸創作教育において顕著な実績を有しているホリンズ大学で、ライティング・キャンプやワークショップなどの教育的取組に参加し、文芸創作教育の目的や指導法、ガリキュラム、教育環境、評価などについて、全米から集まった作家や文学研究者たちから、直接学ぶことができた。 2 文献研究によって、19世紀後半からの学校教育における文芸創作教育の歴史を跡づけるとともに、ホリンズ大学に集まった作家・研究者たちとの情報交換をとおして、文芸創作教育を取り巻く現状について知見を広めた。文芸創作教育は、ライティング教育の中でも最も娯楽的で芸術的な科目であり、学生の人気は高いものの、教育目的や卒業後の進路の曖昧さ、アカデミズムとの齟齬、社会との実質的な連携不足など、課題を抱えている。 3 これらの成果の集大成として、日本での文芸創作教育の実践に応用するために、作家たちの協力を得て「子どもたちの童話創作ワークショップ」を実施した。プロセス・ライティングの方法論に基づき、特に、創作過程における指導者とのコンフエレンスや,子ども同士の作品の共有を通して,ワークショップが「学習の揚」を超えた,楽しくかつ実りある「コミュニケーションの場」としても機能することを重視した。また、表現力を高めるエクササイズを、貝本人の精神構造や教育環境に適応するための工夫を凝らした。十分に練られたエクササイズは,ライティングの技能を楽しく身につける助けになると同時に,参加者のコミュニケーションを円滑にするうえで効果的である。
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