研究概要 |
1)英語やドイツ語などの他の言語との比較において,日本語名詞の形態的・統語的・意味的特性を明らかにし,これを学会発表,学術論文の形で公表した。 2)Krifka, Chierchiaら欧米研究者の多くは,冠詞の不在,複数形の不在,豊富な類別詞(助数詞)の特徴から,中国語・日本語タイプの名詞は質量(物質)名詞相当であり,種を表わす名辞であると主張した。これに対し,本研究では日本語タイプの名詞は質量名詞対応であるが,最小単位(個体性)を有する名詞もあり,可算・不可算の区別があること,意味的にも種指示が出発点ではなく,むしろゲルマン言語と同様に述語から出発すること,日本語の複数形態「たち」には欧米言語の複数個体に類似した意味と,異なる連想的意味があることを明らかにした。 3)Chierchiaの名詞句のパラメータ(NPの項性と述語性)では英語・ドイツ語のような同系言語タイプにおけるDP(定冠詞の有無)のふるまいが説明できないこと,これを説明するには指示の同一性に関する統語的・意味的分析が必要であることを明らかにした。 4)日本語にも複数形「たち」があること,その特殊な統語特性と意味特性を明らかにした。 5)日本語名詞の総称的意味について,英語・ドイツ語との比較において明らかにした。 6)日本語の類別詞(助数詞)の類型的・意味論的比較を行い,助数詞が欧米の言語における数範疇に対応すること,「三人の学生」,「学生三人」などの統語的変異は異なる統語構造に基づくものであることを明らかにした。
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