研究課題
基盤研究(C)
本研究は、若者の携帯電話、とりわけメール機能を利用したコミュニケーションの実態を明らかにすることにより、メディア時代における日本人の言語活動と人間関係がどのように変容しつつあるかを究明し、より豊かなコミュニケーションのあり方を探ろうとした。研究方法、研究成果は以下のようにまとめられる。<調査対象・方法>3年にわたり、若者が実際に交わした携帯メールを集中的に集め、そのコミュニケーションにおける本質的な特徴と、経年変化する特徴を分析した。また、アンケート調査を加えることにより言語使用と言語意識の地方差をさぐった。<調査・分析内容>1.ジェンダーの視点から、男女差はどのように現れているか2.対人関係や対人意識が、表現の使い分けにどのような影響を与えているか3.情動性をどのような言語的ディバイスで表現しているか4.書きことば、話しことばとしての特徴をどのように備えているか5.規範からはずれることへの志向性がどのような言語的な表現に表れているか6.対面ではないコミュニケーション・メディア特性がどのような言語的な変化をもたらすか7.非対面の非音声言語であることが方言使用の実態と意識にどのような影響を与えているか分析の結果、携帯メールは話しことばと書きことばの特徴を生かしたハイブリッドなものであり、それがコミュニケーションを生き生きとしたものにしていることが明らかになった。いっぽうで、非対面・非音声のメディアであることが距離を生み、関係性の危うさも作り出すことが示唆された。本研究は教育的な側面も重視した。携帯メール分析を学生と行なうことにより若者の日本語へ興味および日本語研究への意欲を掻き立たせることに成功した。学生との共同作業から生まれた分析の全容は、毎年刊行した報告書にまとめ(『日本語学研究報告1〜3』)、関係者に配布した。すなわち、本研究の意義は日本語研究を教育的材料として利用できたことにもあるといえよう。
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