研究分担者 |
張 麟声 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (80331122)
森山 卓郎 京都教育大学, 教育学部, 教授 (80182278)
庵 功雄 一橋大学, 留学生センター, 助教授 (70283702)
井上 優 独立行政法人国立国語研究所, 日本語教育研究部門, 主任研究員 (30213177)
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研究概要 |
本研究は,日本語と中国語の対照研究の成果をふまえて,中国語を母語とする日本語学習者に対する日本語教育に役立つ文法教材を開発することを目的としておこなった。具体的には,次の3つのことをおこなった。(1)言語教育を視野に入れた対照研究の内容と方法について検討した。具体的には,対照研究と言語教育の関係に関するこれまでの流れを概観するとともに,学習者の母語の表現と学習言語の表現の対応関係のあり方によって,言語教育のために必要な対照研究の内容と方法が異なることを明確にした。(2)対照研究の成果を日本語教育に結びつける際に重要なポイントとなる点について考察し,特に「日本語の文法の説明や項目の導入順序を学習者の母語の感覚に合わせる」ことを提案した。具体的には,結果残存の「ている」の意味を,中国語の"了"の使用感覚に合わせて「完了」と説明する,中国語の授受表現が通常「与え手主語」となることを考慮し,与え手主語の「くれる」を先に教え,受け手主語の「もらう」は後で教える,などの提案をおこなった。(3)中国人母語話者にとって学習上重要な日本語表現について分析をおこなった。具体的には,中国の大学で学ぶ日本語学習者を対象に文法性判断テストをおこない,中国語話者にとっての日本語表現の難易度について考える基礎資料を得た。また,日本語において,相手の発話の一部を繰り返す発話に「復唱的確認」と「コメント準備」の2つのタイプがあり,後者がしばしば「非賛成的態度」の表明として用いられることを明らかにした。
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