研究概要 |
本研究では,オンラインクローズシンステムを開発し,グループチャットを併用することで,すぐれたストラテジーの使い手同士が行う情報交換を未熟なストラテジーの使い手が周辺から観察し,徐々に議論に参加することにより解答ストラテジーを身につけていく正統的周辺参加の実態を,ある程度解明することができた。 すなわち,チャットルームを使用すると,個人の場合と違って文法に関してより正確な解答が導き出されること,そのため全体の正答率が上がること,メンバー全員が正解を確信した空所から埋めていくこと,お互いにストラテジーを交換したり,他のメンバーへの説明のためにストラテジーを意識して使うようになることが判明した。 このことにより,クローズの手法に限定されてはいるが,英文読解における文法的,談話的,語彙的,背景知識の活用方法が多少明らかになり,今後のCommunity Language Learningでの読解指導の貴重な資料とすることができた。 さらに,研究の展開として,今後ますます活発となる国際交流において,クローズという手法に限らず,コミュニケーションの道具としての英語を使用した一般的な問題解決・意思決定プロセスの場において,英語力の未熟な者が,より優れた者(多くの場合,海外の英語学習者)から表現と問題解決ストラテジーを学びながら,英語力とストラテジーを習得していくための実践研究も行った。そこでは,必ずしも英語での発言に積極的ではない日本人学習者に対して,教師または優れた英語力とストラテジーを兼ね備えたFacilitatorが積極的に関与することで,正統的周辺参加の理論の実践の場として,より多くのストラテジーを導き出し,交換し,意識して使うことを推進できるノウハウを得ることができた。今後,この分野の実践研究を進めて行く基礎固めが確立されたと言えよう。
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